平成29年度から適用される個人住民税の税制改正
改正項目
- 給与所得控除の見直し
- 日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等の義務化について
- 金融所得課税の一体化について
1 給与所得控除の見直し
給与所得控除の上限額が段階的に引き下げられます。適用時期は以下の表のとおりです。
所得税 | 平成25年から平成27年分 | 平成28年分 | 平成29年分以後 |
---|---|---|---|
上限額が適用される給与収入額 | 1,500万円 | 1,200万円 | 1,000万円 |
給与所得控除の上限額 | 245万 | 230万 | 220万 |
住民税 | 平成26年度から平成28年度課税分 | 平成29年度課税分 | 平成30年度以後課税分 |
---|---|---|---|
上限額が適用される給与収入額 | 1,500万円 | 1,200万円 | 1,000万円 |
給与所得控除の上限額 | 245万 | 230万 | 220万 |
2 日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等の義務化について
日本国外に居住する親族(国外居住親族)に係る扶養控除等の適正化の観点から、所得税の確定申告や個人住民税の申告等において、国外居住親族に係る扶養控除(16歳未満の扶養親族含む)・配偶者控除・配偶者特別控除・障害者控除の適用を受ける者は、「親族関係書類」及び「送金関係書類」の添付又は提示が必要です。これらの書類が外国語で作成されている場合には、日本語での翻訳文も必要です。
なお、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収又は給与等の年末調整の際に源泉徴収義務者に提出し、又は提示したこれらの書類については、確定申告書、市・道民税の申告書に添付又は提示は必要ありません。
平成28年1月1日以後に支払われる給与や公的年金の源泉徴収及び給与の年末調整、平成28年分以後の所得税確定申告、平成29年度以後の市民税・県民税申告から適用となります。
(1)親族関係書類
親族関係書類とは、次のA又はBのいずれかの書類で、国外居住親族が納税者の親族であることを証明するものです。
A.戸籍の附票の写し、その他日本国、都道府県又は市区町村が発行した書類及び国外居住親族の旅券の写し
B.外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
(2)送金関係書類
送金関係書類とは、次のA又はBのいずれかの書類で、納税者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に送ったことを証明するものです。
A.金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により、納税者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類(送金依頼書等)
B.いわゆるクレジットカード発行会社が発行した書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード会社が交付したカードを提示して国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその納税者から受領し、又は受領することとなることを明らかにする書類(クレジットカード利用明細書等)
3 金融所得課税の一体化について
これまで公社債等については、利子・譲渡・償還によって課税の仕組みが異なっていましたが、平成25年度税制改正において、税負担に左右されずに金融商品を選択できるよう、異なる税率等の課税方式の均衡化を進める観点から、株式等の課税方式と同一化することとされました。また、特定公社債等の利子及び譲渡損益並びに上場株式等の金融商品間の損益通算範囲を拡大し、3年間の繰越控除ができることとされました。
平成28年1月1日以後に支払いを受ける公社債等の利子及び譲渡所得、株式等の配当及び譲渡所得に適用となります。
(1)公社債の課税方式の変更
公社債については、特定公社債等と一般公社債等に区分した上で、課税方式が変更されます。特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債などの一定の公社債をいいます。
特定公社債等 | 一般公社債等 |
---|---|
特定公社債 | 特定公社債以外の公社債 |
公募公社債投資信託の受益権 | 私募公社債投資信託の受益権 |
証券投資信託以外の公募公社債投資信託の受益権 | 証券投資信託以外の私募公社債投資信託の受益権 |
特定目的信託の社債的受益権での公募のもの | 特定目的信託の社債的受益権での私募のもの |
- 特定公社債等の利子は、源泉分離課税(所得税15%、住民税5%)から申告分離課税(所得税15%、住民税5%)に統一されます。
- 一般公社債等の利子等については、20%の源泉分離課税が維持されます。
- 特定公社債等の譲渡益については、非課税から20%の申告分離課税に課税方法が変更されるとともに、税制上、上場株式等と同様な取扱いとされます。(損益通算、繰越控除が可能)
- 平成28年1月1日以後行う割引債の償還及び譲渡については、20%の申告分離課税されます。平成27年12月31日以前に発行され償還差益が発行時に源泉徴収の対象とされたものについては、18%の源泉分離課税(所得税18%、住民税非課税)が維持されます。
- 所得税においては、平成25年から平成49年までの間に生じる所得について、確定申告や源泉徴収の際には、表中の税率とは別に2.1%の復興特別所得税が課されます。
- 平成28年1月1日から特定公社債等についても、特定口座で計算される所得の対象として受け入れることができることとされました。
- 平成28年1月1日以降、特定公社債等の利子等については、利子割(住民税5%)の課税対象から除外したうえで、配当割の課税対象とされます。
- 源泉徴収選択特定口座内の特定公社債等の譲渡所得として申告した場合、株式等譲渡所得割の課税対象とされます。
内容 | 所得区分 | 公社債等 |
---|---|---|
利息 利子 |
利子所得 | 源泉分離課税(申告不要) 20%(所得税15%、住民税5%) |
売却益 譲渡損益 |
譲渡所得 | 非課税 |
償還差益 | 雑所得 | 総合課税 (所得税5~45%超過累進税率、住民税10%) (注意)割引債は発行時18%の源泉分離課税 (所得税は18%、住民税非課税) |
内容 | 所得区分 | 特定公社債等 | 一般公社債等 |
---|---|---|---|
利息 利子 |
利子所得 | 申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%)
|
源泉分離課税(申告不可) 20%(所得税15%、住民税5%) |
売却益 譲渡損益 |
譲渡所得 | 譲渡所得として申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%)
|
譲渡所得として申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%) |
償還差益 | 雑所得 | 譲渡所得として申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%)
|
譲渡所得として申告分離課税 20%(所得税15%、住民税5%) |
(2)損益通算・繰越控除・分離課税制度の変更
- 従来可能であった「特定公社債等及び上場株式等」と「一般公社債等及び未公開株式等」は別々の分離課税制度となり、両制度間での損益通算が不可能になります。
- 特定公社債等に係る利子所得及び譲渡所得について、上場株式等の配当所得及び譲渡所得との損益通算が可能になります。
- 特定公社債等の譲渡損失のうち、その年に損益通算しても控除しきれない金額は申告により、翌年以降3年間繰越控除が可能になります。
- 「特定公社債等及び上場株式等」と「一般公社債等及び未公開株式等」は別々の分離課税制度となり、両制度間での損益通算が不可能になります。
平成28年1月から次の1と2の区分による別々の分離課税制度が適用されます。
区分 | 各区分内の損益通算 | 各区分内の繰越控除 | |
---|---|---|---|
1 | 特定公社債及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税 (申告分離課税を選択された上場株式等の配当所得との損益通算も可能) |
できる | できる |
2 | 一般公社債等及び一般株式等(未上場株式等)に係る譲渡所得等の分離課税 | できる | できない |
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