風景の国宝【最上川上流域における長井の町場景観】を紹介します
文化的景観とは
地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地のうち、人々の生活や生業の理解のために欠くことのできないもの(文化財保護法第二条第1項第5号より)
文化的景観とは眺めとしての景観だけではなく、私たちが長い年月をかけてその土地の自然や風土とともに営まれてきた生活や生業によってつくられてきた生きた景観です。 その中でも、地域の特色を示す代表的なものや、他に例を見ない独特なものとして国が選定したものが「重要文化的景観」です。重要文化的景観の選定制度は、平成17年の文化財保護法の一部改正によって新しく誕生した文化財です。
重要文化的景観は、これまでの形を保存するという文化財とは違い、地域文化財としてそれぞれの地域の社会環境の変化に応じて保存していくという動態保存が目指されています。
長井市の『最上川上流域における長井の町場景観』が国重要文化的景観に選定されました
長井の町場は朝日連峰を水源とする置賜野川の豊富な水量がもたらした治水と利水の歴史が扇状地の散居集落を形づくり、さらに流れ下って宮・小出の町場を巡る河川・水路や敷地内水路により町場の生業を発展させました。さらに、最上川舟運による流通・往来が、町の都市基盤、産業基盤を形づくって今の時代につながっています。
この「水のつながり」による独特な景観形成が評価され、最上川舟運で流通往来に欠かせない最上川流域と舟運時代の繁栄を今に伝える歴史的建造物や水路を引き込んだ土地利用が現在でも多く見られる宮と小出区域が平成30年2月13日に『最上川上流域における長井の町場景観』として国から重要文化的景観に選定されました。平成25年に選定された大江町の「最上川の流通往来及び左沢町場の景観」に次いで県内で2番目の選定となり、これまで全国で65件の景観が重要文化的景観に選定されていますが、東北では4件だけであり、県内に2件も「風景の国宝」とも言える文化的景観が存在していることになります。(令和元年10月16日時点)
文化的景観における重要な構成要素
文化的景観は地域に住んできた人々の生活や生業、風土によって形成された複合した独特な景観地です。
長井市の文化的景観は、選定基準において、
5.ため池・水路・港などの
「水の利用に関する景観地」
7.道・広場などの
「流通・往来に関する景観地」が複合したものです。
この文化的景観を構成する上で欠かせないものとして、所有者や管理者の方からのご理解を頂き同意を得た上で「重要な構成要素」として以下の通り設定しています。
(1)河川
【一級河川】最上川
【準用河川】新町川、撞木川、木蓮川、平野川、花作川、大樋川、野呂川、本町川
長井の町場形成の重要な要素である最上川
江戸時代から確認される大樋川と野呂側の立体交差水路
消雪用水や防火用水として利用されている準用河川
町中の石積み水路
台所に引き込み利用する「入れかわど」
建物の中に水を引き込み利用している樽洗い場
(2)道路
【国道】287号線
【県道】寺泉舟場線(253号)、長井大江線(9号)、久保桜線(166号)
【市道】西裏線(61号)、館町線(266号)、本町西3号線(298号)、堀切粡町線(83号)、大町船場線(247号)、花作平山線(17号)、船場清水線(248号)、片田神明町線(583号)、遍照寺前線(314号)、東裏線(53号)
小出区域の中央を南北に通る道
宮区域と小出区域をつなぐ南北の道
小出から最上川を渡り南へ向かう道
長井の町場(宮)から最上川右岸へと通じる道
宮区域と最上川をつなぐ東西の道
小出区域と最上川をつなぐ東西の道
(3) 橋梁
長井橋、さくら大橋、撞木橋
宮区域から東対岸へと最上川を渡る舟渡しや、舟運期には船着場があったとされる辺りにかかる長井橋
江戸時代後期の絵図で確認することができる宮と小出をつなぐ撞木橋
小出区域から東対岸へと最上川を渡る舟渡しや、舟運期には船着場があったとされる辺りにかかるさくら大橋
(4) まちなみ
宮のまちなみ、小出のまちなみ
治水・利水・雨乞いなど、古くから水をつかさどる大社として重きをなしてきた總宮神社
宮と小出に権立された長井の町場の繁栄と商人たちの信仰を伝える石碑
米沢藩の玄関口として重要な役割を果たした青苧蔵御門
江戸時代後期に設営された小出船着場にたたずむ石碑
道路沿いに並ぶ短冊状の敷地割りに対し、表から、店、主屋、蔵を基本とした配列の一体的な建築群
観光コースとして市民や観光客に親しまれているまちなかの水路
(5) 建造物
總宮神社、摂取院、貿上醤油店、旧西置賜郡役所、旧丸大扇屋、風間商店、長沼合名会社、合資会社鍋屋本店、岩城屋、長遠寺、薬師寺、白山神社、皇大神社、やませ蔵、山一醤油、旧丸中横仲商店、旧有限会社村上織物、特選呉服いちまた、齋藤家住宅
宮区域が西置賜郡の中心地であったことがわかる旧西置賜郡役所
かつての豪商の商い空間と暮らしぶりを伝える旧丸大扇屋
十日町にある8代続く荒物屋
江戸以来の商家建築と水路、醸造工場での貴重な水利用の風景をそのまま伝える山一醤油
白山神社と共に区分けなく並び立ち、神仏混淆時代の景観を伝える長遠寺
やませ蔵はあら町通りにある江戸時代から続いた紬問屋で豪商「山清」の屋号を持つ
(6)石造物
舩玉大明神碑
最上川舟運の安全を祈願した舩玉大明神碑
文化的景観に関する資料
重要文化的景観の位置図及び範囲図は当課で閲覧ができます。
重要文化的景観選定区域
重要文化的景観区域PDFファイル (PDFファイル: 1.8MB)
『長井市の文化的景観保存調査報告書』
「長井市の文化的景観」保存調査報告書1 (PDFファイル: 14.0MB)
「長井市の文化的景観」保存調査報告書2 (PDFファイル: 17.8MB)
「長井市の文化的景観」保存調査報告書3 (PDFファイル: 10.9MB)
『最上川上流域における長井の町場景観保存計画』
「長井市の文化的景観」保存計画 (PDFファイル: 5.3MB)
紹介動画
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更新日:2024年05月17日